2019年度の公演は終了いたしました。
たくさんの方のご観劇、誠にありがとうございました。
7月13日(日)の楽日公演をご観劇いただいた、演劇観照家の高木 登 様が、
ご自身のホームページで観劇日記をアップして下さいました。
ご了承の上、当ホームページに本文を掲載させていただきました。
ご覧いただけるとステージの様子をご理解いただけると思います。
この場をお借りして高木 登 様に感謝申しあげます。
YSG第16回公演・日英語劇 『コリオレイナス』
前回をもってYSG(ヨコハマ・シェイクスピア・グループ)主宰者で座長の瀬沼達也氏が退団され、今回から飯田綾乃代表、海老塚祐也統括、斉藤佳太郎マネージャーの3人によるトロイカ体制で新たなる出発の演目は、シェイクスピアの中でも最も知名度の低い作品の一つ、『コリオレイナス』が取り上げられた。
日本ではほとんど上演される機会がないが、興味ある作品の一つなのでYSGがどのように舞台化するか期待して、今回は5年前に"雑司ヶ谷シェイクスピアの森"で会読したアーデン版とその時のノートを参照しながら再読した上で観劇した。
版本にもよるが『コリオレイナス』は『ハムレット』に次いで長く3800行からなる作品で、ノーカットで上演すれば4時間近くかかると思うが、それを90分に圧縮しての上演で、作品が知られていないだけに、この作品を知らない観客にどれだけ内容が理解されるかが一番の課題になる。
そのことを意識してか、今回はいつもより日本語による台詞も多く、特に護民官シシニアスを演じる森川光がもう一方の護民官であるブルータスの役も取り入れ、序詞役のようにして全体の流れが理解できるような台本構成となっており、しかも演じる森川がその役を楽しんで演じているのがありありと見えており、観客も一緒になって楽しめたのではないかと思う。
劇は主役もさることながら脇役次第で舞台全体が生き生きと盛り上がってくるものだが、今回は演出、制作、出演と八面六臂の活躍をしている海老塚が、コリオレイナスが執政官となるため市民の票を集める場面で、市民3役を一人で演じたのが出色であった。
最初の市民では、選挙など何の関心もないといったちゃらちゃらした若者を演じ、続いて周囲のことに目が向かないオタク青年、そして最後は杖をついた老人役を早変わりの衣装と演技で演じた。
執政官選挙にあたって、コリオレイナスの選挙ポスターや彼自身が選挙のタスキをかけて市民に投票を依頼して呼びかける姿は、今、参議院議員選挙の最中にあるだけに、海老塚の市民役はその選挙の有り様をとらえた時事的な風刺としてもよく出来ていたと思う。が、なによりも、面白かったことが一番であった。
出演情報によると一人芝居『ハムレット』の公演が予定されているオーフィディアスを演じた佐瀬恵子は、貴公子然として颯爽としており、まさにハムレットを思わせ、注目した一人であった。
コリオレイナスを倒した後のオーフィディアスの「遺体を担ぎ上げろ」という台詞は『ハムレット』のフォーティンブラスに重なるが、「立派な記念碑を建て、彼の高潔な生涯を長く記憶にとどめよう」という台詞の場面で、コリオレイナスの剣を台座に突き立ててメモリアルに表象する演出は印象深く、心に残る秀逸な演出だった。
コリオレイナスの母親ヴォラムニアを飯田綾乃、妻ヴァージリアを遠藤玲奈、友人ヴァレリアを小嶋しのぶと、英語の発声の美しい3人が演じ、その台詞力を堪能させてくれたが、3人の衣装も注目された。
ヴォラムニアは強烈な意志と個性を感じさせる赤の衣装、ヴァージリアは控えめな性格を表しておとなしい色調、ヴァレリアは快活な性格で明るい橙色で、それぞれがその性格を表するのにふさわしい衣装の組み合わせであった。
『コリオレイナス』では主役のコリオレイナスに次いで台詞の多い、主役に劣らず重要な人物メニーニアスを遠藤敬介が快活に生き生きと演じ、主演の斉藤佳太郎のコリオレイナスを盛り上げていたのも特筆される。
YSGの重鎮的存在の佐藤正弥がその存在感を発揮してコミニアスを演じ、他にずぶのシロウトと評される客演福地信が存在感のある元老院、もう一人の客演小見山瑛が伝令役その他を演じ、総勢11名の出演。
今回出演していなかった金森江里子は、音響担当でしっかりとまとめた。
終演後のアフタートークでは、英語が分からないという人にも理解できたという感想で、今回の日英語の組み合わせは成功であったといってもよいのではないかと思う。
今後の活躍を大いに期待したい。
上演時間は、90分。
演出・構成・製作/海老塚祐也、演出補佐/遠藤玲奈
7月14日(日)13時開演、横浜・山手ゲーテ座
髙木 登 アーデンの森散歩道 より
《2019年度公演》 YSG第16回公演
「Coriolanus」
コリオレイナス
ローマの英雄、マーシアス。
今日も戦で武勲を挙げ、コリオレイナスの称号を与えられる。
だが、その性格が故に市民からは嫌われており、
ついには国を追放されてしまう。
彼は、ローマへの復讐を決意し、
敵国のライバルであるオーフィディアスと手を結ぶ。
愛、信念、裏切り、様々な思いの渦巻く中、
英雄は何を選択するのか?
ーーーシェイクスピア最期の悲劇。
公演日: 2019年7月13日(土)14:00~・14日(日)13:00~
場所:岩崎ミュージアム 山手ゲーテ座
みなとみらい線「元町・中華街駅」より徒歩3分・JR根岸線「石川町駅」より徒歩15分
観劇・参加料:当日 3,000円 予約 2,500円 学生 1,000円(全席自由席)
学生(小学生~大学生)の方は受付にて学生証(生徒手帳)のご呈示をお願いします。
ご予約方法 〈予約開始日2019年6月1日(土)〉
【両日とも定員(各日100名)を超えた場合、予約を締め切らせていただきます】
1.観覧予約ページの入力フォームに従って必要事項を入力の上、送信ボタンを押してください。
2.ご予約番号などをメールにてご連絡させて頂きます。
3.当日、受付にてお名前とご予約番号を伝え、チケット代金をお支払いください。
※頂いた情報は、ご予約手続き以外には使用いたしません。
※ご質問などございましたら、お問い合わせページよりご連絡ください。